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名古屋地方裁判所 昭和58年(わ)626号 判決 1983年9月21日

裁判所書記官

鬼頭孝寿

本店の所在地

名古屋市熱田区八番二丁目一七番九号

(昭和五七年一一月一四日住居表示変更前は同区八番町五丁目一六番地)

法人の名称

愛知電線株式会社

代表者の住居

同 熱田区大宝四丁目一一番一〇号

代表者の氏名

前田正則

本籍

名古屋市熱田区大宝四丁目一一〇九番地

住居

同 熱田区大宝四丁目一一番一〇号

会社役員

前田正則

昭和一〇年一〇月一四日生

右の両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官門西栄一出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人愛知電線株式会社を罰金三、五〇〇万円に、被告人前田正則を懲役一年六月に各処する。

被告人前田正則に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人愛知電線株式会社(以下単に被告会社という)は、名古屋市熱田区八番二丁目一七番九号(昭和五七年一一月一四日住居表示変更前は同区八番町五丁目一六番地)に本店を置き、ビニール被覆電線の製造販売等を営むもの、被告人前田正則は被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括するものであるが、被告人前田正則は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上及び期末たな卸の一部除外などの方法により所得の一部を秘匿した上

第一、昭和五四年四月一日から同五五年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が二億一、七三五万三、〇八九円で、これに対する法人税額が八、四九八万九、九〇〇円であるのに、同五五年五月三〇日同区花表町七番一七号所在の熱田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、四五〇万三、一二八円で、これに対する法人税額が三〇二万九、二〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度における正規の法人税額との差額八、一九六万七〇〇円を免れ

第二、同五五年四月一日から同五六年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が六、一〇三万五三円で、これに対する法人税額が二、二〇三万四、五〇〇円であるのに、同五六年五月二九日、前記熱田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四、七七二万六、五九五円で、これに対する法人税額が一、六七一万二、九〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度における正規の法人税額との差額五三二万一、六〇〇円を免れ

第三、同五六年四月一日から同五七年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億一、七九五万三、二九二円で、これに対する法人税額が四、六一三円であるのに、同五七年五月三一日、前記熱田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三三一万八五〇円で、これに対する法人税額は無い旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四、六一三万円を免れ

もって、いずれも不正の行為により法人税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一、被告人兼被告会社代表者前田正則(以下証拠の表示においては単に被告人前田正則という。)の当公判廷における供述

一、被告人前田正則の検察官に対する供述調書三通

一、被告人前田正則の大蔵事務官に対する質問てん末書六通

一、被告人前田正則作成の上申書二通

一、前田嘉兵衛の検察官に対する供述調書

一、前田嘉兵衛(二通)及び渡邊貞明の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、白川義一及び早野慧作成の各上申書

一、伊藤明及び加藤章作成の各照会回答書

一、大蔵事務官作成の証明書三通(検察官請求証拠等関係カード甲7ないし9)

一、大蔵事務官作成の査察官調査書一四通(同証拠等関係カード甲10ないし23)

一、名古屋法務局登記官作成の商業登記簿の謄本

判示第一の事実について

一、大蔵事務官作成の証明書二通(同証拠等関係カード甲1於び4)

判示第二の事実について

一、大蔵事務官作成の証明書二通(同証拠等関係カード甲2及び5)

判示第三の事実について

一、大蔵事務官作成の証明書二通(同証拠等関係カード甲3及び6)

(法令の適用)

被告会社の判示第一の所為は、昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条、一六四条一項に、判示第二及び第三の各所為は、右改正後の同法一五九条、一六四条第一項に、被告人前田正則の判示第一の所為は、行為時においては右改正前の同法一五九条に、裁判時においては右改正後の同法一五九条に、判示第二及び第三の各所為は、右改正後の同法一五九条にそれぞれ該当するところ、被告人前田正則の判示第一の罪については、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、同被告人につき各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は被告人両名につきいずれも同法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金三、五〇〇万円に処し、被告人前田正則については同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用して同被告人に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 横山義夫)

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